事業を進める上では事業資金の確保で悩む場面が訪れます。
潤沢な資金があって資金繰りに困らないという会社はそう多くありません。
特に中小企業となれば、資金ショートの危機に瀕するシーンを経験された方も多いと思います。
事業資金を調達・確保する方法はいくつかありますが、今回はでんさいを活用したファクタリングが中小企業の資金調達に適しているか見ていきます。
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ファクタリングとでんさいをそれぞれ解説
通常のファクタリングとでんさいファクタリングはどちらも債権を活用していることは間違いありません。
とはいえ、通常のファクタリングとは別に『でんさい』を取り扱う企業があるようにもちろん違いは存在するのです。
そこでまず、そもそもこちらの2つはどういったものか見ていきましょう。
ファクタリングとは
まず、ファクタリングとは売掛債権を売って現金化する資金調達法をいいます。
掛取引においては売掛債権が発生しますが、これは将来の支払日に支払いを受けられる債権(権利)です。
急な資金需要が生じ、支払日まで待っていられない事情ができた場合は、売掛債権をファクタリング業者に譲渡して現金化することができます。
でんさいとは
一方、でんさいとは言葉の解説としては「電子記録債権」を指すワードです。
通常の取引では債権債務の情報を契約書や発注書などの紙媒体を用いて記録しますが、これを電子記録の形で残したものが電子記録債権です。
そして、電子記録債権を用いて取引をすることができるシステムに「でんさいネット」があり、これを利用することでペーパーレスでビジネス取引をすることが可能になります。
取引上のデータがネット上で管理されますが、その電子債権を売ることもできます。
つまり電子記録債権を用いたファクタリングをすることができ、これを「でんさいファクタリング」と呼びます。
以下の項ではでんさいファクタリングと通常のファクタリングの共通点や相違点を取り上げていきます。
でんさいファクタリングと通常のファクタリングの共通点
でんさいファクタリングと通常のファクタリングの共通点の一つは、どちらも売掛債権の譲渡取引であることです。
売掛先の支払日前に売掛債権を現金化することができるので、資金需要が生じた場面で利用することができます。
でんさいファクタリングと通常のファクタリングの違い
次に、でんさいファクタリングと通常のファクタリングの違いについて見ていきましょう。
大きな違いは以下の3つになります。
- 債権の違い
- スキームの違い
- 入金までの速さ
債権の違い
でんさいファクタリングで取引対象になるのは電子記録債権で、電子記録債権法という法律の下で管理されている債権が売買されます。
でんさいでは電子的にシステム化されていますが、通常のファクタリングで売買される債権はそのようなシステムはありません。
通常のファクタリングでは、売掛債権が存在するかどうか、個別の取引で生じた契約書や発注書などを確認して取引を進めることになります。
スキームの違い
システム化されたでんさいファクタリングでは、売掛先の企業に知られずにファクタリングをすることはできません。
システムの仕様上、ファクタリングをした事実について、どうしても相手方が知りえてしまう状況になります。
通常のファクタリングでは、個別のファクタリング業者にもよりますが二社間取引と三社間取引を選択することができます。
二社間取引を用いれば、自社とファクタリング業者の二社だけが取引当事者となるので、売掛先に知られずにファクタリングを利用することができます。
入金までの速さ
通常のファクタリングでは、早ければ即日の入金も可能ですが、でんさいファクタリングでは多くの場合即日入金は難しいとされています。
でんさいの他の機能と通常のファクタリングの違い
でんさいネットでは他に「でんさいによる債権譲渡」と「でんさいによる割引」の機能があります。
特に前者がファクタリングと混同されることがありますが、でんさいの債権譲渡は例えば、A社の売掛債権を持つB社が、C社への支払いにA社の売掛債権を使用することを指します。
売掛債権を用いて支払いをすることが、C社への債権譲渡となるわけです。
このスキームでは手元に現金を用意できるわけではないので、全ての資金需要には対応できません。
後者は手形の割引に似ていて、銀行に売掛債権を買い取ってもらうものです。
スキームとしては通常のファクタリングに似ていますが、違いはデフォルトリスクがあることです。
売掛先企業が倒産すれば債権を譲渡した企業が補償責任を負うことになるので、債権譲渡企業に大きなリスクが付きまといます。
通常のファクタリングは、ノンリコースでデフォルトリスクがないものがほとんどです。
中小企業の資金繰りにでんさいファクタリングは適さない4つの理由
でんさいは良い面もありますが、中小企業の資金調達手段として考える場合、でんさいファクタリングは適しているとは言えません。
その大きな理由は以下の4つが挙げられます。
- 秘密性を確保できない
- 迅速性で劣る
- 売掛先がでんさいに加入していなければならない
- 対応するファクタリング業者が限定される
秘密性を確保できない
ビジネスでは信用が何よりも大切で、少しでも信用が低下すると取引を敬遠されたり、取引を停止されることもあります。
この点は中小の事業者であれば痛いほど身に染みていることと思いますが、ファクタリングの利用を知られることは大きな信用低下につながります。
「売掛債権を売るなんて、あそこはよっぽど資金繰りが危ういんじゃないか?」「あそこと取引しても、きちんと支払いをしてくれないかもしれない」という憶測を呼んで、業界内での信用が低下し、ビジネスに支障が出る恐れが出てきます。
でんさいファクタリングは売掛債権の譲渡が知られてしまうので、信用低下のリスクを避けられません。
迅速性で劣る
資金ショートが起こりうるような場面では、資金調達に迅速性が求められます。
通常のファクタリングは最短即日の入金も可能ですが、でんさいファクタリングは多くの場合即日の入金は難しいため、必要な期日までに現金を用意できない可能性があります。
売掛先がでんさいに加入していなければならない
でんさいファクタリングを使うには、売掛先の企業がでんさいに加入している必要がありますが、でんさいに加入する企業はそれほど多くありません。
でんさいファクタリングは使いたくても使えないことが多いというのが実情でしょう。
対応するファクタリング業者が限定される
でんさいファクタリングに対応できるのは銀行もしくはその子会社のファクタリング業者に限られ、事業者間の競争もあまりありません。
通常のファクタリング業者は顧客獲得のための意識が働くので、利用者にとって有利な業者を探して取引に持ち込むことができます。
まとめ
本章ではでんさいとファクタリングについて比較し、どちらが中小企業の資金調達法に適しているか見てきました。
でんさいはペーパーレスでビジネスができるという利点がありますが、基本的に資金調達の手段として作られたシステムではなく、利用する企業も少ないので、中小企業の現金確保手段として適しているとはいえません。
迅速確実に、かつデフォルトリスクなく安全に資金調達をするには通常のファクタリングの方が断然お勧めできます。